明日はどこにあるのだろう。 ふと、胸に手を当ててみる。 なにか丸いものが、この中で回っている。 ものすごく重いのに、不思議と静かに浮いている。 明日はこれかもしれない。 そう思うと、誰かに呼ばれたような気がして、窓の外を見る。 もう夜だ。 早いな。 そう言えば、夜はどこから来るのだろう。 また、胸に手を当ててみる。 そして、顔を上げる。 すると、目の前には大きな光の塊が輝いていた。 宝石だ。 本当にウソみたいな光。 あれは誰にも触れられず、すぐまた消えてしまう。 だから、西の海の向こうに住んでいたあの子は、 消えることがないようにたくさんのマッチを燃やしたのだ。 そう、あれは大きなマッチの光だ。 あの子が深夜に自分の悲しさや寂しさに耐えきれず、燃やしたのだ。 ああ、なんて大きくて煌めいていて、美しいのだろう。 昔、丘の上から見た朝日にも似ている。 けれども、いまは深夜。 太陽が出てくるまでには時間がまだかかる。 だから、西の海の向こうに住んでいたあの子のマッチなのだとわかった。 信じられないことだけれども、これは僕のおじいさんのそのまたおじいさんから伝えられている話だ。 もう僕はあの子が、マッチ売りの少女だと知っている。 あの子が誰だと教えられていないけれど、もうわかる。 あの子が亡くなってから、ときどきマッチの光は夢を見るようになったのだ。 大昔に燃やしたマッチの光は夜中に夢を見ている。 消えたはずのマッチは、いまだ消えずに、いまのいままで眠っていた。 そして、ときどき、あの頃を思い出して、あのように燃えているのだ。 ねえ、見てごらんよ、あの頃の光となんら変わらない光じゃないか。 ……そうか、君は寝ていたのだったね、失礼。 僕もそろそろ起きなくてはならない。 あの頃のマッチがあの頃を思い出して燃えている。 そして僕もまたあの頃の光を思い出して夢を見ている。 だから、僕が目覚めれば、あの光も同時に消える。 さようなら、マッチ売りの少女よ。 また誰かの夢を照らしてくれ。 明日はもうすぐそこにある。 |