夜の中で、ひとつ、輝いていた。 誰に知られることがなくても、聴こえてくる遠い国の歌のように、 寒空の彼方を、どこまでも遠く、どこまでも儚く、 ただ、そうして、物音もしない空気の中で、静かにこだまして、 どこまでも繊細に、どこまでも耳に深く残り続ける疲れという名の結晶が、 毎日の暮らしの中で、命をあふれんばかりにばらまいて、 この夜と共に光り輝き、そして、朝と共に消えていく。 ああ、 それでも、ときおり眠れない夜の足元には、 疲れがひんやりと落ちているときがある。 思わずわたしはそれを手で触れて、思わずわたしは目をつぶる。 どこまでも冷たく、なによりも鋭く疲れはわたしを貫いた。 わたしの中で生まれて、わたしの中で冷たく尖った疲れという名の結晶は、 それでも、朝には消えてしまう。 わたしはそれを手のひらから、そっと、朝日に落とした。 まるで、それは、わたしみたいに、 少しだけ泣いて、少しだけ笑って、 あてどもない光の中へ溶けて、 そして、また今夜、歌い出す。 |